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Introductionはじめに

プレジデントホテル水戸の『アートプログラム』

ホテル館内にある美術作品は、ホテルを設計の段階から考えられ設置されました。その為、作品が強烈な個性を発揮することも埋没してしまうこともなく、ホテルを彩り、ゆったりとした、やすらぎの空間を醸し出しております。また、「茨城の自然(空・緑・水)」をホテルの基本コンセンプトとしております。

ロビーや客室をはじめ、廊下やレストランなどにも目を向けていただき、訪れたお客様に少しでも楽しんでいただけたら幸せです。

[美術作品協力者:佐藤洋照 氏・野沢二郎 氏・山口奉宏 氏]

くつろぎの空間を分ける“結界”

当ホテルの正面玄関を入ると、いきなり壁が立ちはだかり、行く手を遮ります。“風除室”を設けてあるのですが、ちょうど、江戸時代の武家屋敷の正面玄関が屏風で仕切られているように、ホテル客を左右の導線に分ける構造となっております。

多くのホテルは、ロビーを“ホテルの顔”と位置付け、玄関を入って最初に感動を与える空間とし、シャンデリアや生花で飾った豪華な雰囲気に仕上げています。風除室を設けても、銀行などの店舗のように透明なガラス張りで、開放的な印象をそこなわないようにするのが一般的です。第一“壁”をつくると、心理的に「入りがたい」状態となり、客商売の原則にも反しています。

しかしそれは、風除室を一種の“にじり口”に見立て、ビジネスの熾烈な世界と、ホテル内の安らぎ、くつろぎの空間を分ける“結界”とした。いうなれば日本文化の根底部分にも通じる茶道の世界を現代に表現しているのであります。

“美術陶板”が彩るホテル空間

「プレジデントホテル水戸」の個性を創るひとつの要素にアートプログラムがあります。“セラミック・アート”の実験的な作品が文字どおり館内を彩り、ゆったりとした、やすらぎの空間を醸し出しております。

企画・設計から参画

ホテルのアートプログラムというと、一般的には、まだまだホテルづくりの最後の工程で考慮されるような位置付けが多いですが、当ホテルでは、このアートプログラムを企画・設計の段階から推進すべく、アート・プロデューサーともいうべきキーマンを置いて、館内全体の作品を展開しております。その意味では非常に珍しくもあり、贅沢なホテル作りなのであります。

「ホテルの美術作品は強烈な個性を発揮してもいけないし、施設と遊離しても、埋没しても駄目。今回は特にテーマや作品のタイトルはないが、強いて言えばホテルの基本コンセプトに沿った“茨城の自然(空・緑・水)”を意識した」

こう語るのは、アートプログラムを担当した、当ホテルオーナー企業の佐藤洋照顧問。佐藤顧問は、もともとが大学の美術の教授であり、ホテル建設構想が具体化した時期から、平面造形の野沢二郎氏、立体造形の山口泰宏氏といった地元の作家を起用、3人で取り組んできました。

「作品はすべて3人のオリジナル。玄関に入って、エレベーターに乗って各フロアへ行き、客室に入る。この間にも廊下のニッチに土(陶)や木や和紙などの自然素材を用いた作品を配置して一貫性をもたせ、館内にゆったりとくつろげる雰囲気をつくり出したかった」

随所に飾られたアート作品は、ホテル特有のシンプルなパブリックスペースに、文字通り彩りを添え、「プレジデントホテル水戸」の個性をつくり出しております。

地元作家と新素材で展開

アート作品の中では、特に美術分野で注目されている“セラミック・アート”の、その鮮やかな色彩が存在感を放っています。

“美術陶板”と呼ばれる特殊製法の陶の大型平板や、外壁用建材の“OTセラミック”に釉薬を焼き付けた作品ですが、佐藤顧問が以前から「絵を描くように扱えないものだろうか」と興味を持っていた素材で、釉薬にオイルや糊を混ぜて、筆やヘラ等を使って陶板の上に描いていき、それを乾かし、窯に入れて焼いて色彩を定着させていく手法です。陶器などの焼き物と同様、色は焼き上がってみないとわからず、どこで焼きを止めるかで微妙な色彩ができあがります。そして、全客室にこの“OTセラミック”の作品が飾られております。

「絵を描く上で制約はあるが、もともと具体的な対象物を描写しようと考えてはおらず、物としての質感や、そこに漂う空気を味わって欲しいと思っている」

代表的な“美術陶板”の作品は、1階のバンケットルームの正面の壁と12階レストランの個室の壁に飾られたもので、バンケットルームでは燃えるような赤系の色彩で、縦1.7m、横4.4m、レストランでは深みを感じる青系の彩りとなっていて、縦1.6m、横4.0mのサイズ。

“美術陶板”“OTセラミック”による作品制作には大塚オーミ陶業(株)が協賛しています。

当ホテルは、アートプログラムの展開で地元作家に発表の場を提供すると同時に、風土が生んだ作家が“水戸市の玄関”ともいえる地にかかわりを持った意識も小さくはありません。こうした試みが地域の文化を育て、ひいてはホテルの個性を創っていけばと考えております。

プレジデントホテル水戸

プレジデントホテル水戸